豊田市の高級きもの専門店 柏屋呉服店

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染織紀行

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2014年04月18日 10:00  カテゴリ:染織紀行

染と織~その2

前回の記事の続きです。

「染と織~その1」
http://kashiwaya-gofuku.co.jp/e265641.html

今回は、織物工房を見学した際のことを書いてみたいと思います。

指先の繊細さを必要とされる染の作業とは違い、織物、特に手織りの場合は、力仕事が必要となります。
今回訪問した工房は、西陣織物組合の登録番号一桁という非常に深い歴史を持った手織り工房です。



前回訪問させていただいた染工房と違い、年配の職人の方が織機を操り、職人気質を存分に感じさせてくれる雰囲気でした。
帯を一反織り上げるのに、20~30日の期間がかかるとのことで、かなりの根気が必要とされます。
それに加えて、かなりの力仕事であり、更に非常に高い技術を要するため、職人の育成も容易ではないとのこと。

昨今、安価な織物が市場に出回っているため、昔ながらの工程で手間隙をかけて作成された高価な織物は、需要が激減しています。このため、職人の方々は十分な報酬を得られていないのが現状で、その人数は激減しています。
また、若い世代も、厳しい仕事にもかかわらず相応の報酬を受け取ることができないという理由でこの職場を敬遠するため、次世代の育成も滞っている状況だそうです。


こんな話を聞いていると、「日本のきもの産業は、消費の減少うんぬんではなく、職人不足によって、川上から崩壊してしまうのでは?」と思えてなりません。

私どもは一個人商店ではありますが、きもの産業の一端にかかわるものとして、こうした状況をどう打開してゆけばよいのか、真剣に考えなければいけないのだと実感しました。

古来の工法で作られたきもののよさ(深みのある色合いや手触りなど・・)をきちんと消費者の方々に伝え、適正な値段で提供していく、まずできるのはそんなところでしょうか?
市場を鑑みると、商社や小売店によっていろいろな販売手法がとられており、なかには消費者の方々に不信感植えつけてしまうようなケースもあるようです。

職人の方々を、ひいては日本の伝統産業を守るという意味で、繰り返しにはなりますが、きものの良さやその工程にかかる手間隙、その対価として適正な価格はどのくらいなのか、そうしたことを消費者に訴えかけていくことが、我々小売店の使命であると改めて認識しました。  


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2014年04月03日 17:31  カテゴリ:染織紀行

染と織~その1

先日、自分の勉強兼々、京都に工房見学に行ってきました。
染・織、それぞれ見学させていただいたのですが、今回は、染工房について書いてみようと思います。

染工房というと、素人(自分はまだまだ素人です・・)的発想としては、「頭のかたい職人気質の親父が、真剣勝負といわんばかりに気合を入れて仕事に取り組んでいる」というイメージを持っていました。
ところが、今回お邪魔させていただいた工房は、若い女性が中心。しかも、みんな容姿端麗。男としては、きものよりも、そちらの方に目が言ってしまいがちでした・・m(_ _)m
しかし、仕事への取り組みは、イメージどおり。まさに真剣勝負です。掃け染めや型染めのための糊置きなど、様々な作業を見ることができましたが、ひとつひとつ丁寧に取り組まれていました。
工房の横には書庫があり、そこには日本伝統の模様などが載った図鑑などがたくさん並んでいます。デザイナーの方々は、それらの書物を参考にしながら、新しい図案を考案していくとのこと。


きものの柄は単に新しければよいというものではなく、日本古来の模様を取り入れつつ考案する必要があます。
そのために必要な図案集・模様集が書庫に保管されているわけですが、今では入手不可能となっているものも多数あり、その資産価値は相当なものだとお聞きしました。

伝統を活かしながら新しいものを創造する・・・まさに温故知新という言葉が、ここでは実践されています。
<染工房にて>
手染めの作業は、相当な時間と労力を要します。
単純に染めるだけではなく、より深い彩色を出すために、何度も何度も重ね染をするそうです。
古来の模様を研究するためにかける費用も、相当なものです。
そうして出来上がった反物は、ひとつの芸術品として、十二分に通用するものとなるわけですね。


最近の市場では、工場での大量染色やプリントによって、また国外の安い労働力を使うことにより、非常に安価な着物が流通しています。
個人的には、いかに労働力が安いとはいえ、日本文化の象徴というべき染色や織物の技術を国外に持ち出すこと自体に反対なのですが、それはさておき。
この工房で実践されているような古来の手法による手染めによってできあがった着物は、大量生産されたものとは、その色彩や肌触りにおいて、一線を画します。特に、その色の深さは、手間隙をかけた重ね染によって初めて実現できるもので、コストを追求した安価な着物では到底出せるものではありません。

素人(まだ、素人ですわ・・)ながら、「着物は高価なものだ」と単純に考えていましたが、そこには価格に見合うだけの十分な価値が、様々な形で注ぎ込まれているのだということを、実感しました。そうした価値のすばらしさをいかに世の中に広めていくか、それこそが私たちきもの専門店の使命であると、改めて実感しました。   


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